<話題の本>『自分とか、なんてないから―教養としての東洋哲学』

<話題の本>しんめいP (著)、監修:鎌田東二 (著)
『自分とか、なんてないから―教養としての東洋哲学』 (サンクチュアリ出版、2024年)

 事務局長の佐藤です。
 今回は話題の本を紹介します。

 ご存じの方も多いと思いますが、本書は爆発的に売れ、22万部を突破したそうです。著者の経歴は、東京大学を卒業し、誰もが知っている大会社に就職するが、仕事ができずに退社。その後、島で再起を図るが失敗。さらにお笑い芸人を目指すが挫折。そして数年間、ふとんの中に入って「引きこもり」の生活をする中で、東洋思想の書物を読み、その感想をブログに発表し注目され、本になったものです。

 内容は、釈迦、龍樹、老子、禅、親鸞、空海の6人の東洋の思想家が取り上げられています。本書は普通の東洋思想の本とは違い、とにかく面白いです。
 
 本書の魅力は、第一には語り口の面白さ。「お笑い芸人」を目指しただけあって、文章が読み易いだけでなく、とても面白い。電車の中で読みながら、笑いを我慢するのが大変でした。第二には、東洋思想を自分の中で消化していること。通常、思想の書物の場合、えてして難解な文章を難解なまま書いて終わる場合が多いですが、著者は自分で消化し表現しているところが素晴らしい。さらにそこにもギャグのセンスがあります。第三には、ただの解説書ではなく、東洋思想によって著者自身が救われた体験を書いていることです。一部を引用します。

 何をやっても駄目だった。もうおわりである。「からっぽ」をかくすためのストーリーのバブルは、ぜんぶ弾けてしまった。島への移住、芸人挑戦。表面の経歴だけは面白く語れるが、じっさい、大部分、ふとんで寝ていただけだ。中身はからっぽである。まじめに頑張っていた友達は、30代になって出世しはじめた。・・自分と違って、みんな誰かの役に立っている。目立つ人も、目立たない人も、自分の役割をこなしている。僕は自分がどうみえるかだけを考えて生きてきた。おそろしく「からっぽ」である。・・学生時代読んだ東洋哲学の本。「からっぽ」になったいま、心に刺さるようになっていた。空の哲学。「自分」とはそもそも「からっぽ」だ。そして「からっぽ」だからこそ最高なのだ。

 このように、本書は解説書ではなく、東洋哲学によって救われた一人の人間の記録なのです。

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